ないものねだいありー

気づけば中堅社会人になった、30代中盤社会人の内なる思考をこぼしていきます。読書メモ多め。グロービスMBA修了。

11/9 資生堂ショック=育児時間取得者と非取得者との不公平さにまつわる問題、というのは論点がずれている

本日、ちょっと気になる記事を見つけた。

 

“資生堂ショック” 改革のねらいとは|特集まるごと|NHKニュース おはよう日本

 

記事の内容はリンク先を参照してほしいが、要するに

 

・育児のため短時間勤務をしている美容部員は、早番シフトが暗黙の慣例だった

・しかし時短勤務者が増えたことで、稼ぎ時である夕方の時間帯に人手が足りず、販売機会の損失につながっている、さらに通常勤務者へ負担がかかっている

・そのため時短勤務者も遅番・土日に入ってもらうように変えます、ノルマも通常勤務者と差をつけません、という改革を昨年4月から始めた

 

という内容だ。

 

これがなぜ資生堂「ショック」かというと、女性の働きやすい職場づくりを他社に先駆けて行ってきた資生堂が、育児中の従業員に対して厳しい態度を取る方向に方針転換した、と捉えることができるからだ。

現に、ネット上では多くの批判が飛び交っている。

“資生堂ショック”とは?各社の報道内容まとめ【日経新聞、AERA、NHK「おはよう日本」】 - マネートーク!

【資生堂ショック】資生堂…全国の女性を敵に回す?資生堂ショックがNHKで報道され女性激怒!→炎上へ! | まとめまとめ

 

 

とまあ、ここまでは事実の確認で、この先は私見だが・・・

タイトルの通り、この話のそもそもの論点は、そもそも育児時間取得者-非取得者間に不公平さが生じていた、ということではないと考える。

 

資生堂には近年、国内売上高の低迷という重い経営課題がある。

その原因の一つが、百貨店の稼ぎ時である時間帯の人手不足にあるのだとしたら、何らかの方法でその時間帯の人手を増やすという選択肢にたどり着くのは自然な流れだ。

そのとき、どのようにして人手を増やすのか、というときに、社内のリソースである時短勤務者を活用しよう、というのが、今回の改革の根底にある考え方なのではないだろうか。

 

美容部員は、専門職である。美容に関する高度な知識を有し、顧客のニーズに最も合う化粧品を推薦することが仕事である。従って、人手が足りなくなったからといって、短期のアルバイトなどですぐに補うことができる職種ではない。

当然、コストの問題もある。時短の分給与が減っているとはいえ、追加雇用を行ったら差額はどうしても発生してしまうだろう。

 

今回の改革の際、資生堂側も美容部員に対して配慮を見せている。冒頭の記事にも「会社側は改革を実現するため、夫や家族の協力は得られるかなどを聞き取ってシフトを決めることにしました」とある。

正確な数字は分からないが、仮にこの改革後の美容部員の退職者数が特異的に増加しているわけではないとしたら、全員に遅番・土日勤務を強制しているわけではなく、可能な人、希望する人にだけ絞って行っているという解釈もすることができる(ここは事実確認が必要だが)。

そうだとすれば、育児をしながらキャリアアップを目指したい美容部員にとっても、人手不足を解消したい資生堂側にとっても、この改革は整合性のとれた、良い改革だということもできるだろう。

 

 

そのうえで・・・

今回、半ば炎上しかかっているのは、資生堂側の従業員に対するメッセージの発し方にあるだろう。

記事中には、育児時間対象者に対して配布されたDVDの冒頭で「役員が制度に甘えるなと警告しました。」とあった。これでは、後退と取られてもおかしくはない。

そうではなく、「育児をしながらでもキャリアアップを図ることができる人がより挑戦しやすいよう変えていく」とか「育児との両立は大変でも、会社としてこういう課題があるから力を貸してほしい」とか、そういう「共に頑張ろう」的なメッセージにしていれば・・・もしかすると、世間の見方は変わっていたかもしれない。

 

以上、ざっくりと考えてみたことでした。