ないものねだいありー

気づけば中堅社会人になった、30代中盤社会人の内なる思考をこぼしていきます。読書メモ多め。グロービスMBA修了。

2/28 読書メモ:イノベーションのジレンマ

15冊目。最近数冊並行して読んでいるため、一時的に更新のペースが落ちている。

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press

 

 

所要時間約7時間40分。

反復し、書き込みし、理解に努めながら読んだため非常に時間を要したが、意図的にそうしたし、この読みかたで良かったと思っている。

それだけ、読みごたえがある内容だったし、何周もして自分の中に落とし込みたいと思える本だった。

 

内容は方々で紹介されていると思うので簡潔に記載するが、ある市場で成功している「優良」企業が、自社の技術の延長線上にない「破壊的技術」に遭遇した時に、なぜその台頭を許してしまうのか。そして、その対応をするためには何をどうすればよいのか。そんなことが書かれている。

(覚書程度に書いておくと、破壊的技術の特徴は、登場したばかりのときは単純で、従来の技術と同軸での性能は圧倒的に見劣りし、単位性能あたりの価格も高い。そのため、既存の市場では到底受け入れられない。しかし、同時に既存の技術にはない特徴を有しており、既存技術と比べて製品単価は安いため、従来とは全く違う市場でニーズが生まれる。そして、一旦その技術が受け入れられるとその市場において性能を強化していって、時間とともに上位の市場=既存の市場を攻撃するようになる。

破壊的技術が最初に攻撃する市場は、既存企業にとっては魅力の薄い(薄利または小規模)であるため、既存企業はむしろハイエンドに集中できるようになる。そして、既存の重要な顧客相手、および利害関係者(バリューネットワークの関係者)を重視し、ますます性能を高めていく。すると、いつしか性能の供給過剰が起き、破壊的技術にシェアを奪われる。気づいたときには既に遅く、なすすべもなくなっている・・・

これを避けるために、独立した適切な規模の組織に任せるとか、失敗できるような参入の仕方をするなどの、既存の優良企業にも対応できる方法が書かれている)

 

本書では、定量的に性能を測ることができる技術を軸に理論を展開していたが、巻末の解説にあるように、広い意味での技術(それこそ販売とかブランドとかも含め)に対しても適用できる理論であることには間違いない。

この本を読んでいて真っ先に思いついた身近な例は「携帯電話のメール」(持続的技術)と「LINE」(破壊的技術)だ。携帯メールの機能には、アプリに紐づくものも含め、(アドレスさえ知っていれば)誰にでも連絡が取れること、過去のメールの保存件数、フォルダ分け等の付随機能、などがあった。個人的には特に、過去のメールを保存していて見られること(当時は高校生だったので・・・)フォルダ分けに価値を感じていた。

これらの軸で見ると、LINEは大きく見劣りした。まず、LINEでやり取りをするにはお互いが知っていないとできないが、初期のころは当然やっている人が少なくそもそも連絡が取れない。また過去のメッセージは(実際には保存されてはいるが)見返す手間がかかり検索もできない。さらにフォルダ分けもできず使いづらい。なぜこれをみんな使うんだろう?と最初は思っていたものだ。

しかし、LINEには代わりになる特徴があった。やりとりの簡便さ(いちいちメールアドレスを探さなくてよい)、スレッドの一覧性(これはメールにはない)、複数人でのトークルーム(メーリングリストはあったが外部への登録が煩雑だった)、スタンプ、無料通話など、「携帯電話を通じたコミュニケーションのバリエーションが広がる」という価値があった。

メールは、基本機能で十分であり、せいぜい保存件数が増えたとか添付ファイル容量が上がったとかその程度だろう。そうこうしているうちに、LINEの利用者が増えて基本機能を満たすようになると、簡便でバリエーションが豊富なLINEへと利用者は移行し、メールは一気に衰退(もちろんまだ残っているが)した、という流れになる。

 

また全然違う例では、「メジャーバンド」と「インディーズバンド」という構図もありだろう。メジャーなバンドの「性能」を、例えば歌唱力や音楽性、歌のメッセージ性とする。いわゆる良い歌・うまい演奏であり、綺麗に録音された音源で一世を風靡しているバンドである。多くのCMとタイアップしておりファンクラブもにぎわっていて、ライブは常に満員御礼というイメージだ。

これに対し、「破壊的な」インディーズバンドは、歌はそこそこ、演奏もそこそこ、音源はチープで、歌のメッセージは勢いばかりだとしよう。既存のリスナーには見向きもされない彼らは、新しい「市場」を探さなければならない。

しかし彼らには、メジャーバンドにはない特徴があるだろう。ライブのパフォーマンス、インディーズならではの無茶苦茶ともいえる勢い、ファンとの距離の近さなどだ。こんな彼らが一番最初に評価されるのは、例えば音楽フェスの一番小さなステージなどがあるだろう。「破天荒なパフォーマンスで楽しめるライブ」という軸で、従来のバンドには見向きもしなかったファンを獲得していく。その中で、演奏力や歌唱力、レコーディングの質などを急激に高めていく。

メジャーバンドは相変わらず歌唱力を磨き、いい音楽を作ろうと試行錯誤をしている。しかしその「性能」の向上は、気づけば一般のファンの認識の範疇を超えていく。気づいたときにはファンをインディーズバンドに取られはじめ、しかしその頃にはもう後戻りできず、「ハイエンドな市場である」コアな音楽ファンをターゲットとして活動を続けていくか、新しい市場に対応しようとするかをメンバーがもめるうちに仲が険悪になり、活動休止に陥る・・・というような流れだろう。

 

もちろん音楽のファンの形は様々であり、一度大成したバンドでずっとその人気を保っているアーティストもたくさんいるし、そもそもこんな経営学を当てはめる考え方に抵抗のある音楽ファンはたくさんいると思うが、こんなはめ方もあるかな、と思って出してみたのが上の例。

 

奇しくも今、自社の新規事業を考えようとしていたところで、とても参考になる本だった。

どんどん読み返すと同時に、友人とも読書会をして(セッティング済み)、理解を深めていきたい。