12冊目。
鈴木敏文の統計心理学〈新装版〉―データサイエンティストを超える仕事術
- 作者: 勝見明
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2013/11/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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所要時間約3時間半。
言わずと知れたセブン&アイホールディングス会長の鈴木氏へのインタビューを通じて、「独特」と呼ばれる鈴木氏の経営に対する考え方を明らかにしていこうという内容。
統計心理学というタイトルは冠しているものの、アカデミック的な要素は一切なく、鈴木氏の考え方の原点にあるものを既存の学問にはめるとすれば、統計学と心理学に落ち着く・・・といったところだろう(本人もそう言っているらしい)。
読んでみて一番感じたのは、鈴木氏は「今、そして少し未来の顧客の立場」で考えることを徹底していて、それを補助しているのが、米国的な経営学ではなく心理的な要素を加味したデータを分析する力(=心理統計学)であるんだ、ということ。
この「今、そして少し未来の顧客の立場」とは少々長ったらしいけれども、この言葉には二つのポイントがあって、まとめると下記の点(あまりまとまっていないかもしれないが・・・)。
・買い手にとって合理的なことは売り手にとって非合理的なことである
⇒だからどうしても売り手の論理の引力が強いため、とにかく意識的に「顧客の立場」で考えることは徹底しないと実践できない。この時、顧客の立場になるために、色々な時間軸でデータを見てみたり、顧客の心理動向を考えてみたりすることが、統計心理学のエッセンスである。
・(特にモノ余りの昨今においては)昨日の顧客≠明日の顧客であり、過去の延長で将来のことを考えることはそもそも難しい
⇒だから長期的に計画立ててそれに縛られたり、過去の売上がこうだったから明日の仕入はこれくらいで、とするんじゃなく、過去のデータを心理要素を加味して分析することで新しい仮説を立てて、それを検証するためにデータを確認する、という使い方をすることが大切である。
グロービスで学んでおり、また統計学を仕事で扱っている身としては、「過去の延長に未来はない」との教えは非常に重要な点を突かれた感じがした(鈴木氏は社内では「本は読むな」とすら言っているそう。これも過去の延長に未来があるわけではないからとか)。
それを分かったうえでなお過去から学ぶということはもちろん否定されることではない。しかし同時に、未来を創造するためにはそれだけでは不十分であるという思考を欠かしてはならないと理解した。
セブン&アイは優良企業の代表格とあって、社内で商品開発担当役員の講演を聞いたこともあれば、グロービスのオペレーション戦略で単品管理の手法について扱ったりと、色々な場面で触れることが多いが、その原点となっている部分を垣間見ることができたことで、分断されていて記憶の彼方に葬られていた学びを少し呼び起こすことができた。
「不確実な将来の予測」この点は、MBA的思考には欠けていると感じることが多い。統計心理学、そして行動経済学は、そこに対する自分の考え方を確立するうえで、一つのヒントになるかもしれないな。せっかく統計学について知識を有しているわけだし、強みを伸ばすという意味でここに注力すべきだろう。
色々と新しい視点が多かったもんだから、思考が拡散してまとまらない。
幸いともに読み進める人がいるので、一度議論しないとなあ。
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余談だが、実はこの本、最近固め読みしていた失敗学に若干飽きて手を出したのだが、見事に文中に失敗学の記載が出てきてちょっと驚いた。笑
仮説検証のサイクル、うーん確かにつながっている。飽きたとか言ってちょっと反省。上手く気持ちを向けて読んでいこう。